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『ストリンガーの沈黙』林譲治 [ハヤカワJコレクション]

『ウロボロスの波動』の続編。宇宙に進出した人々地球の対立が激しくなる一方、異星人の痕跡らしきものも観測されているという話。前作は、連作短編集だったが、今回は長編になっている。前作は、対立自体に焦点が当てられていたが、今回は対立に決着が付く一方で、異星人の方も出てくる。異星人自体よりも、むしろ、全体を通してのテーマはコミュニケーションになっている。ただ、前作から引き継いでいるから仕方ないのだが、宇宙に進出した人々は、科学者共同体的ユートピアな訳で、それに対して、地球側を架空戦記に出てくる日本のように描いているのは、どうなのだろう。それはともかく、作者は架空戦記からデビューしているので、戦闘シーンも良くできている。『記憶汚染』の時も感じたが、少しネタを詰め込みすぎな気もしないでもない。また、もう一つのテーマがエージェントなのだが、それで社会も解釈するのは、最近の流行りなので、分からないでもないが、経済に関しては貨幣無きユートピアというのは、やはり気になる。全体としては、前作を読んでいないと分からないが、両方合わせれば、異星人とのコンタクトを目標としたオーソドックスなハードSFである。というわけで、余計な物を削ぎ落としたハードSFとしては面白いが、この作者には、むしろ、もう少し、ある種のブラックなコメディーのある話を期待したい。


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