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『インシテミル』米澤穂信 [文藝春秋]

高額の時給に釣られて、密室の殺人ゲームに参加することになった人たちの話。単なる殺人ゲームではなく、ミステリー的に構成はされている。色々と、有名なミステリー作品のネタが出てきたりして、本格ミステリーマニア向けではあるが、必ずしも、そうでなくても、十分に楽しめるようになっている。というのは、見方を変えれば、ライトノベルでも、『扉の外』のようなゲームをさせられる話はあるわけで、むしろ、そういったコンテキストに近いとも言えよう。とはいえ、形式上は、ミステリー的な文脈に全面的に沿っているが、この手の殺人ゲームにありがちな読後感の悪さは意外と無く、あっさりしているのが特徴だろう。これは、この作者の作品が、大体、苦くはあるが、そう読後感が悪いわけでないので、この作者が書くとそうなってしまうのであろう。もっとも、参加者の背景や動機的な面は、結局、ほとんど最後まで明かされることがないからでもあろう。この作者の作品としては、『ボトルネック』と同様にメタな話として考えるべきであろう。というのは、結局、この殺人ゲームの設計がどうかという点に話の焦点の一つが行き着いてしまうからである。

ミステリーのランキングでは、トップ10に入ったりもしているが、『遠回りする雛』の方が出来は良いのではないかと思うが、シリーズで短編集というところで損をしたか。


タグ:米澤穂信
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