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『進化の設計者』林譲治 [ハヤカワJコレクション]

SF。ハヤカワSFシリーズJコレクションだが、『ウロボロスの波動』や『ストリンガーの沈黙』のAADDシリーズではなく、ハヤカワ文庫から出た『記憶汚染』と同じぐらいの技術水準の話である。設定自体は、『記憶汚染』と必ずしも、同一ではないが、大体似たような感じである。テーマは、タイトルからすると、最近、流行りの「ID」理論の批判と言うことになるのだが、実際は、『記憶汚染』と同様に、ネタをいくつも詰め込んでいる。『記憶汚染』は結局、何がやりたいのか、分からなくもないが、という所で、伝奇物的な展開で無理矢理纏めていたが、今回は、スーパーコンピューターと猫といった感じである。ただ、ネタを大分、整理した感じもあり、割とわかりやすい。細かい所では、一種のモビルスーツが登場したり、興味深いネタは多いが、全体のストーリーはすっきりしている。他には、外部評価委員会というシステムに対するある種の批判もあり、組織論的にも面白い。この作者の作品は、毎回、科学者共同体ユートピア的な話が出てくるが、今回もやはり、登場する。ID理論に関しては、それ自体に対する批判はオーソドックスだと思うが、むしろ、それを信奉する団体の思想がちょっと捻ってあって、興味深かった。

『記憶汚染』は文庫だが、こちらは何故か、Jコレ。逆だった方が良い気もするというか、AADDシリーズほど、ハードSFではないので、文庫でも良かった気もする。ただ、Jコレ自体、9月にこれが出てから、一冊も出ていないし、次の予定も明らかではないのはどうなのだろう。


タグ:林譲治
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