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『追想五断章』米澤穂信 [集英社]

本格的なミステリー。今回は主人公の大学生が依頼人の父の書いた結末の伏せられた五編の小説を探す話。それを通して、過去の事件を推理することになる。『儚い羊たちの祝宴』は、最後のオチでひっくり返るような短編集だったが、これはある意味ではそれの発展系と言えよう。つまり、作中の小説の最後のオチを推理することになる。ただ、雰囲気は、『儚い羊』はブラックだったが、こちらは作中の小説は割とそうだったが、全体としては、むしろ、『古典部』シリーズなどと同じく苦い。1992年が舞台の話で、その後の長期不況を思わせるように、雰囲気は暗いのだが、今から、その時を振り返ると、まだ、バブルの残り香が漂っていて、そんなに暗くはなかった気がする。とはいえ、今の時点で、書くとどうしてもこうならざるを得ないのであろう。実際、誰かが既に指摘していたが、主人公の大学生がその後、どうなったかを考えると、非正規雇用に就かざるを得なくなった可能性も高いので、そうなるだろう。とはいえ、これは雰囲気の問題であり、全体としては非常に上手く構成されている。


年末にはミステリのランキング本が何冊も出たが、どれでも、この作者の作品が何か、上位にランクインしていて驚いた。今年は『小市民』シリーズの続きに期待したい。
タグ:米澤穂信
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