『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』石川博品 [角川書店(KADOKAWA)]
高校生の主人公は謎の奇病に冒され、力を得るが、その結果、悲惨な出来事に巻き込まれていくという話。割とよくあるタイプの話ではあるが、非常に上手く一冊にまとめていて、良く出来ている。これで完結している。
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『Fate/Labyrinth』桜井光 [角川書店(KADOKAWA)]
『Fate/Prototype』の外伝になっている。これも聖杯戦争の一種だが、迷宮というかダンジョンが舞台になっているところが特徴である。設定も色々捻った感じもするが、ストーリーもちょっと異なるところもあるが、このシリーズの枠内にはある。話はこれで完結している。
『クローバー・リーフをもう一杯』円居挽 [角川書店(KADOKAWA)]
大学構内で神出鬼没に営業されるバーのマスターが持ち込まれる謎を解決するというミステリー。最近よくあるお店物ミステリーの形式ではあるが、むしろ、大学を舞台にしているところが特徴か。雰囲気的にも、森見登美彦とか万城目学あたりの京大物の系譜である。ミステリーとしては連作短編の形式であるが、最後に全体に関わる謎もそれなりに明らかになっている。全体としても上手く構成されている。続きが出せる構造ではあるが、割と話がまとまっているのでどうなのだろうか。
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『Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ 1』桜井光 [角川書店(KADOKAWA)]
『Fate/stay night』の前日譚のノベライズ。割と雰囲気は異なるが、作者のカラーも思ったよりも出ているように思える。構成としては、8年前と今回の聖杯戦争の両方を描いている点が特徴となっている。第2巻まで、既に出ている。話の独立性は高いので、独立して楽しめるようである。
『道徳という名の少年』桜庭一樹 [角川書店(KADOKAWA)]
街で一番美しい四姉妹の子孫を巡る話。かなり、寓話的で、ストーリーの展開は速い。テーマはどうも、音楽のようであるが、話自体はこの作者の他の作品と本質的には変わらない感じである。日本を舞台にしていない分、あまり生々しくなく、却って読みやすいかもしれない。好みも分かれそうではある。
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『ふたりの距離の概算』米澤穂信 [角川書店(KADOKAWA)]
『古典部』シリーズの第五作目。学園物のミステリーになっている。今回は、進級して、春の時点の話になっている。ストーリーは、仮入部した一年生の少女が、入部しないと言い出して、何故、辞めたのかを主人公が推理するというものである。ミステリーとしては、それなりにまとまっているが、部活物としては、やはり、新入生が入らないというネタである。この手の部活やサークルを舞台にした話では、『けいおん!』もそうであるが、安定した人間関係を壊さないためか、大体、後輩はなかなか入ってこないのが良くある話であり、これも、同じである。今回もそれなりに面白いが、人間関係が割と固定されている感じがするので、なかなか、難しいのかもしれない。
『芙蓉千里』須賀しのぶ [角川書店(KADOKAWA)]
明治末期を舞台にした一種の大河小説。少女が女郎になって一旗揚げるために哈爾浜へ向かうところから話が始まる。時代的には満州国の出来る前である。元々は、携帯サイトに連載された物を書き直したもののようで、あちこちに引きがあり、途中で飽きさせない。舞台は終始、哈爾浜だが、ストーリーの展開も早く、一気に読ませてしまう。一応完結しているが、連載はまだ続いているようなので、続きに期待したい。
最近は、ライトノベルからシフトしてきているが、ノベルスレーベル当たりでの冒険物的な話にも期待したいところである。
最近は、ライトノベルからシフトしてきているが、ノベルスレーベル当たりでの冒険物的な話にも期待したいところである。
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『全死大戦1、2』元長柾木 [角川書店(KADOKAWA)]
『飛鳥井全死は間違いない』と『萩浦嬢瑠璃は敗北しない』を書き直して、タイトルを変えたもの。西尾維新当たりとは文体などはそれなりに近いが、こちらは、全体としては割とオーソドックスに、システム的な物との闘争、あるいは戦争をテーマとしている。割とメタな視点もあるが、何というか、全体的には新しいと言うよりは結構、古い感じもする。というのは、結局、2巻でやっていることは、単に学校に放火しているだけであったりする。けれども、途中の議論はそれなりに新しい物を踏まえているので、最後のオチとのギャップがあるような気がする。ストーリーは全体として、上手く構成されており、キャラクターも立っていて、見掛けよりは読みやすい。結局、内容としては壮大なプロローグ的な感じもするが、これで完結しているようだ。
タグ:元長柾木
『遠まわりする雛』米澤穂信 [角川書店(KADOKAWA)]
学園物のミステリー。古典部シリーズの四作目になる。今回は短編集で、雑誌に載せられた物が中心で、書き下ろしは一話のみである。ミステリーといっても、日常の謎系なので、派手な殺人事件などは起きないが、地味だけど、興味深い謎解きがある。短編集だからか、意外と、学園物的な面が強く、また、ラブコメ的な展開もそれなりに用意されている。ミステリーとしては、割とありがちではあるが、学園物ラブコメとしては、上手い。特に書き下ろしの「遠回りする雛」の出来は良く、続きを期待させる。地方が舞台の青春物としては、ここに留まるか、あるいはどこかへ出て行くかの分岐点が話の展開上、次に来そうであるが、それがラブコメ的な展開とも重なっており、続きが気になる所である。
『少女七竈と七人のかわいそうな大人』桜庭一樹 [角川書店(KADOKAWA)]
高校生の少女が主人公の話。ラブストーリーなのかというと、微妙にそうでもない。この作者の作品では、地方が舞台だと、そこから脱出する話とそうでないのと両方あるが、これは結局、脱出していく話である。主人公と友達の少年の話はと、それ以外のところの話は色々と落差があり、主人公の母の行動が大きく影を落としている。その意味では、いられなくなって、脱出をせざるを得ないという話でもある。とはいえ、話はきれいにまとまっている。
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