『王とサーカス』米澤穂信 [東京創元社]
『裏窓クロニクル』友桐夏 [東京創元社]
『星を撃ち落とす』友桐夏 [東京創元社]
『折れた竜骨』米澤穂信 [東京創元社]
『製鉄天使』桜庭一樹 [東京創元社]
最近は、ライトノベルから離れているが、やはり、一般文芸との境界線だと思うので、もう少し、ジャンル物の方に期待したい気もする。
『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹 [東京創元社]
鳥取を舞台にしたミステリーと言うことになっている。実際、日本推理作家協会賞を受賞しているが、ミステリーなのかというと、最後の方で、ほんの少しだけ、謎解きがあるだけで、本格ミステリー的な構成ではなく、むしろ、女三代記、あるいは実質的には一代記なのだが、そういった話である。戦後から現代までの製鉄業の企業とそれを経営する一家、そして、その地域の歴史が描かれている。この手の一代記としては非常にうまく出来ているが、歴史的な説明はやや、元ネタの影響が強い気もする。この人の作品は、田舎が舞台の場合、そこから脱出する話とそうでないのに分かれるが、これは脱出せずにやっていく話であるが、孫の代になると、他の話と同様に閉塞感が強まってくる。ただ、そこで終わってしまっているため、構成上は、一見、明るく終わっているようにも思えるが、実のところ、その先があると言うよりは、祖母の時代が終わったということであろう。この話の特徴としては、祖母が千里眼だったりと、ファンタジー的な要素があるのだが、そういった要素で話を締めくくると、 ストーリー上はきれいにまとまっているが、そこにすべてが回収されかねない面があり、微妙な点であろう。
『少女には向かない職業』桜庭一樹 [東京創元社]
「ミステリ・フロンティア」シリーズから出ているので、形式的にはミステリーと言うことになるが、実際にはせいぜい、サスペンスと言うぐらいの所である。中学生の少女が事件に巻き込まれていく話。『推定少女』や『「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と同じ路線で、地方の閉塞した状況における少女がテーマになっている。構成なども巧みであるが、ミステリーだと思って読んでいるとちょっと肩透かしを喰らうような感じである。逆に、少女を主人公としたある種の冒険物としてなら、良くできていると言えるであろう。やはり、この作者にはSFは書けても、ミステリーはちょっと難しいのだろう。
『犬はどこだ』米澤穂信 [東京創元社]
この作者としては、初めての本格的な探偵物。と言っても、犬探し専門の探偵が何故か、失踪人探しや他の仕事を引き受ける内に、事件に巻き込まれていく話。田舎が舞台なのであるが、どうも相当なド田舎のようで、それがきちんと話しに活かされている。ミステリーとしては、結構緻密になっている。『古典部』シリーズとは違って、ライトノベル風ではなく、オーソドックスなミステリーになっている。ただ、微妙な後味の悪さというか、苦さはやはりこの話しにも共通している。